「生きるのが困難な」人々への隣り人に!

福信館炊き出し代表 竹谷 基



 昨年9月以来の経済不況は派遣労働者の大量解雇を生み、職と住を奪われた人々は、途端に野宿生活を余儀なくされました。多くは生活保護受給により、とりあえず、野宿生活は回避されましたが、景気回復のすすまない中、正規労働者の解雇も始まり、一層、職の確保は容易ではなくなり、やがて、野宿生活にならざるを得ない人々は増えて行くのではないかと思われます。
炊き出しの現場ではその影響を受け、必要とする人は昨年同期に比べ約50人の増加があり、年度が替わっても減少は見られません。派遣切れと思われる若い人も目立つようになりました。
そんな中、続けて30代から20代の青年3人と話すことができました。彼らは所謂、派遣切りではありませんが、それでも、理由はともあれ青年たちが野宿生活をせざるを得ないのはあってはならないことだと思います。彼らに安定した職と住が与えられ、生き甲斐のある人生になることを願うばかりです。
 5月のはじめ。炊き出しの時、片隅で一人座っている青年を見つけました。Kさん、33歳、野宿になって半年と言う。仕事をしていたが気弱なところがあって、どれも長続きせず、転職を繰り返す。そうこうしているうちに、将来の展望が見えなくなり、野宿になる。今は、拾った雑誌や本を売って現金を得ている。親元へは帰りづらい、とのことでした。その後、炊き出しでは毎回声を掛け近況を聞いていますが、芳しくないようです。

 6月の終わり、背が高く列のなかでは一際目立った見かけたことのない青年がいたので声をかけました。年を聞いてびっくりしました。Yさん、28歳。野宿になって一週間と言う。交通違反の罰金を払わなかったため80日間の拘置所暮らし、刑を終えて出てきたばかり。職や住を失い、頼る人もないので野宿に。中型トラックの免許を持っているので、その仕事を探している、とのこと。彼のように刑を終えた人には行くところがなく、現に今、服役中の人からの相談が来ています。途端に、野宿と言うのはあまりにひどいではないでしょうか。更正の道を早急に作らねばと思います。
翌週、ボランテイアに来たのかと見かけない青年に声を掛けたら、初めて炊き出しに来た野宿の若者であった。歳は25、半月前から野宿をしていると言う。訪問販売の仕事に就いていたが、成績も上がらず、また、人間関係に疲れて、仕事を止め、実家にも戻らず、今は充電期間中と経緯を話してくれた。もの答えも丁寧で礼儀正しく育ちの良さを窺えた。
この青年にも再出発の機会が得られる場所と時間があればと痛感した。派遣切りや失業の対策はもとよりだが、生きるのに困難な人たちがやむなく野宿生活を強いられる今の社会の有り様にも憤りを感じる。

 炊き出しに来られる様々な人々、特に、今回の若者たちの力にもなれる活動にしたいと願わずにはいられません。

 どうか、みなさま、福信館炊き出しへご理解とご協力をさらにいただけますようお願いいたします。

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