「元慰安婦らの尊厳を回復するために」

河野愛美


私は、数年前、日本軍「慰安婦」という、戦争中に日本軍に監禁され強かんされた多くの女性たちがいることを知った。そして現在も、その被害者らを含め、この問題に取り組んで運動している方たちが、慰安婦問題を解決しようとしない日本政府に対して、元慰安婦たちを含む女性の人権を取り戻そうと闘っている。

慰安婦問題をめぐっては、戦後、元日本軍「慰安婦」の金学順さんが証言したことをきっかけに、日本軍が主導して慰安所を設立していた悪事が明るみに出た。その後、アジア各国で被害女性が名乗りを上げたことで、当時の河野官房長官がお詫びと反省を表明し、加えて、「女性のためのアジア平和友好基金」が設立された。しかし、この基金は国家的責任を回避して民間の募金で賠償するという国家責任を認めない立場をとるものであった。元慰安婦らは国家からの謝罪による尊厳の回復を望んだのであって、国家が責任を認めていない民間による基金は望んでいなかった。さらに、一部の政治家や学者たちの間では、「慰安婦制度は合法であり、慰安婦の証言はねつ造である」などの慰安婦問題そのものを否定する声が上がった。

日本や韓国などの様々な国で、現在、毎週水曜日に宣伝活動が行われ、関係者が「日本政府は慰安婦問題を解決するように、謝罪やお詫びをし、具体的な措置を行うように!!」などと訴えている。そこで声を上げている元慰安婦たちは、高齢で長時間外出することもままならない中、日本政府に対して悲痛な叫び声を上げている。

しかし、日本政府は日韓請求権協定に基づき、個人請求権は消滅したとの一点張りで、元慰安婦たちの訴えを聞こうとしない。そもそも、日韓請求権協定が締結されるまでの政府間交渉においても「慰安婦」問題はほとんど議論されておらず、同問題などの戦争犯罪による被害については考慮されていなかった。したがって、日本政府は、日本の朝鮮植民地支配とアジア侵略戦争によって引き起こされた「慰安婦」に対する歴史的責任を果たしたとは主張できない。

日本で開催された元慰安婦の声を聞く講演会で、元慰安婦は、「現在、日韓関係は慰安婦問題などの影響で良好ではないが、私は過去の歴史に向き合おうとしている日本人が好きである。皆さんと一緒にこの問題を解決しようではないか。女性や子供らが再び戦争の被害に遭ってはいけない。次世代の子孫に辛い思いをさせたくない」と力強く語った。

先月、安倍首相が戦後70年談話を発表した際、「次世代の子孫に過去の戦争における謝罪の宿命を負わせてはならない」と表明した。このような首相の発言を聞いて、未だ戦後補償を受けていない元慰安婦被害者らはどのように思っただろうか。戦後補償とは、謝罪及び賠償を行いつつ、次世代に継承しなければならない問題である。安倍政権は元慰安婦らに正面から謝罪せず、過去の戦争で起きた一つの出来事として終わらせようとしている。過去の戦争責任と向き合った上で未来を志向しなければ、また同じ過ちを繰り返すことになる。戦後70年経過した今こそ、日本社会における歴史認識と人権に対する考え方を見つめ直し、歴史に対して真摯たる日本社会を形成しなければならないと思う。


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